〜「伝えたいのに伝わらない」新人指導の現場から〜
「何を考えているのかわからない」
「少しアドバイスしただけなのに、怒られたと思われてしまう」
「指導とパワハラの境界がわからない」
「新人の本音を引き出せない」
これらは、新人看護師の育成に関わる皆さんから寄せられた、実際の声です。
今回、新人指導者の研修に向けて、事前アンケートを実施しました。
一つひとつの回答を読みながら、私が感じたこと。
それは、
新人だけでなく、指導する側も、こんなに悩んでいるんだ。
ということでした。
「何も言えなくなる」という指導者の本音
特に心に残ったのは、
「言葉がけ一つで問題になるかもしれないと思うと、何も話したくなくなる」
という声でした。
新人のために伝えたいことがある。
患者さんの安全を守るために、指導しなければならないこともある。
でも、言い方を間違えたらどうしよう。
傷つけてしまったらどうしよう。
ハラスメントだと言われたらどうしよう。
そんな不安を抱えながら、毎日指導している人もいるのです。
もちろん、指導する側の言動を振り返ることは大切です。
でも、指導者が萎縮して、必要なことさえ伝えられなくなってしまったら。
それは、新人にとっても、患者さんにとっても、決して望ましいことではありません。
安心して学べる新人がいるように、安心して指導できる先輩も必要なのです。
「今どきの新人は…」で終わらせたくない
アンケートには、
「学ぶ意欲が感じられない」
「自己学習を促しても、勉強したくないと言われる」
「自分たちの時代とは常識が違う」
そんな声もありました。
私自身、長く看護の現場にいたので、指導する側の気持ちもよくわかります。
でも、ここで少し考えてみたいのです。
私たちが当たり前だと思っていることは、本当に相手にとっても当たり前なのでしょうか。
「勉強したくない」という言葉の奥には、何があるのでしょう。
疲れているのかもしれない。
何から勉強すればよいのかわからないのかもしれない。
頑張っても認められないと感じているのかもしれない。
もちろん、本当に学習への意欲が低い場合もあるでしょう。
だからこそ、決めつける前に、少し聞いてみる。
「どうしたら取り組めそう?」
「どこで困っている?」
「どんなサポートがあったらできそう?」
問いかけを変えることで、今まで見えなかった気持ちが見えてくることもあります。
違いは、間違いではなく、違うだけ。
相手を理解することは、何でも許すことではありません。
必要な指導を届けるために、相手を知ることなのだと思います。
新人を育てるのは、一人の指導者ではない
今回、もう一つ気になったことがあります。
「先輩によって教え方が違う」
「指導内容にばらつきがある」
「プリセプターをどう支えたらよいかわからない」
という声です。
新人は、昨日教わったことと今日教わったことが違えば、戸惑います。
そして指導者も、誰かの指導方針と自分の考えが違えば、迷います。
一生懸命に指導しているのに、うまくいかない。
新人が育たないのは、自分の指導力が足りないから?
そんなふうに、自分を責めてしまうこともあるかもしれません。
でも、新人育成は一人で背負うものではありません。
新人を育てるためには、指導者同士が話し合い、共通の目標を持ち、困ったときには相談できる環境が必要です。
そして、指導者自身にも、
「困っていることはない?」
「一緒に考えようか」
と声をかけてくれる人が必要なのです。
安心が先、成長はあと
私が研修で大切にしている言葉があります。
「安心が先、成長はあと」
安心できるということは、何をしても叱られないという意味ではありません。
わからないことを、わからないと言える。
失敗したときに、隠さず相談できる。
必要な指導を受けながらも、自分の存在まで否定されたとは感じずにいられる。
そんな関係性を育てることです。
そして、これは新人だけに必要なものではありません。
指導者だって、失敗することがあります。
伝え方に迷うこともあります。
時には、傷つくこともあります。
そんなとき、
「指導者なんだから、しっかりしなさい」
ではなく、
「難しかったね。次はどうしてみようか」
と一緒に考えられる職場だったら、どんなに心強いでしょう。
支える人が、支えられる職場へ
私はこれまで、看護師として、管理職として、そして現在は病院で働く人たちの相談を受ける立場として、多くの声を聴いてきました。
その中で感じていることがあります。
誰かを支えることに一生懸命な人ほど、自分の気持ちを後回しにしてしまうことがあるということ。
新人のことを考えるあまり、自分が疲れていることに気づかない。
何とか育てようと頑張るあまり、いつの間にか笑顔が減っている。
だからこそ、私は伝えたいのです。
新人を育てるあなたも、大切にされていい。
一人で抱えなくていい。
うまくいかない日があってもいい。
指導者も、学びながら成長していけばいいのです。
新人が安心して育つ職場。
先輩が安心して指導できる職場。
管理職が安心して悩みを話せる職場。
そんな安心の連鎖が、患者さんへのよりよい看護にもつながっていくのだと思います。
「世界で一番入院したい病院」
私の目指すその未来は、きっと、働く人たちが安心して笑顔でいられることから始まります。
正す指導から、支える指導へ。
そして、
支える人も、支えられる組織へ。
新人も、先輩も、管理職も。
誰か一人が頑張り続けるのではなく、みんなで育ち合える職場をつくっていきたいですね。
今日も、誰かを支えているあなたへ。
いつも、本当にお疲れさまです。
あなた自身の心にも、少し優しい言葉をかけてあげてくださいね。
看護師 × カウンセラー × 講師
塚田明美(あけみょん)
あけみょん癒しの保健室
「支える人を、一人にしない」
